下り坂(135)
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「テツは定年になったらどこに住むつもり」
中田の問いに哲也は「小倉に戻ろうかな」と応じた。東京に住み続けるのはやはり生活コストの問題があるし、親の建てた家を相続するということが頭にあった。
「生まれ育ったところを捨てられないのが日本人、アメリカ人は生活の基盤が作れないならそんなことにはこだわらない」
辻が割り込んだ。
「そうだなぁ、でも市役所に入った連中はもうそこでしか生きていく道はないだろ。北九州が何で食べていくのか、製鉄は駄目になったし、観光ということで門司港を色々やっているけどね」
哲也がそういうと「だけど、過疎化していく街にどれだけ資源投入するかというのもねぇ。筑豊も夕張も石炭が取れなくなった時点で安楽死させるべきだったというのもある意味正論だろな」と辻は言った。
「それをテレビカメラの前で言う勇気はありますか」
中田が皮肉った。辻は「俺はもう記者じゃなくなったよ」と応えた。
「日本は狭いようで広いんだよな。そういう場所がもうあちこちに。離島とかまで維持する力があるのかどうか」
右下がりのグラフは経済人の頭には絶対ないだろなと哲也は思っていた。国内市場が縮小するなら海外に出るエアラインもまた国内は縮小するのみで機材を小さくしていくという流れだった。羽田と福岡を結ぶ路線が747から777とシフトしていたが、それはさらに767クラスの機体で十分かもしれなかった。実際スカイドリームは767のリース契約が終わると737に縮小していた。
「人口は減るし、それでも経済成長するならどういう産業がいいか大事だよな」
辻が呟いた。体力は確実に低下するなかでどう技量を向上させるか、哲也はそれを剣道の中で考えるようにしていた。
しばらく別の作品に取り掛かります それから少し進めますが、なにぶんこれは2009年の状態ですので
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