下り坂(129)
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懇親会は立食パーティー形式である。C大学の理事長も顔を出して祝辞を述べた。運輸関係にも内定者がいるということも言っていた。ここの理工学部にМが入っていたが、剣道部ではなくS剣友会で続けていた。A空輸の技術系に内定をもらって来月には四段を受けるところだった。哲也はずっと五段を受けるのを辞退し続けた。
「岡部さんは法律路線で行きますか」
関東部会長にあいさつした哲也はそのように言われた。社会人大学院で修士を取ることも進められたが、どんな分野で取るかが問題だった。哲也自身は法律という観点から考えていたが、この学会は経済学という視点のほうが強かった。実際、会員は経済または商学部で、あとは理科系もかなり多かった。
「もともとは法学部でしたから」
「うちの学会では貴重な存在になります。規制の緩和も経済学と法律だとアプローチが違いますし」
「経済のほうは緩和推進、法律はどちらかというと規制強化の傾向がありますからね」
部会長の横にいた元J航空の人が言った。М大学からW大学に移り、テレビに露出する頻度も上がっていた。
体重別運賃のことを聞いてきた院生は仲間と一緒に料理をむさぼっていた。哲也はビールを注いで、それは面白いアイデアと言い、進路はどうするのかと尋ねた。
「公務員試験を考えているところです」
「大学の教員というのは」
「この先厳しくなりそうで・・・」
地方にあって単科というところは特に厳しくなっていた。旧帝国大学クラスのレベル以下の大学は淘汰が進み、そうなると大学教員という道はリスクが高かった。公務員も先行きは決して明るくなかった。
帰りは元J航空の先生のグループと吉祥寺に立ち寄ることにしてモノレールで立川に出た。二次会で報告を論文として採用してもらうためのアドバイスをもらって井の頭線経由で帰宅したのは午後十一時過ぎである。
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