軍艦のある丘(9)
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棚から引き出した書類に申し込み内容の記されたプリントを取り付けるのがひとまず片付いたのは午前一時過ぎである。どうして内容が決定用の画面に表示できないのかということも会議では問題にあがった。ペーパレス化すると言いながら逆に紙が増えているというのも皮肉な話である。
支社から問い合わせのある契約に決定を出す準備はできたものの、さらに新たな申し込みへの対応が必要なんだろうなと思いながら寮への道を歩いた。丘の下に広がる街の明かりもほとんど消えて星空が綺麗だった。風呂に行く前にまだ洗っていない下着を児童指揮の洗濯機に入れた。営業のように客先周りをしないで済むからワイシャツが洗えなくてもまだ気にならないが、汚れた下着をためたくはなかった。
午前零時にボイラーが止まっても手前から二番目と奥から三番目のシャワーは暖かい湯が出ると言われていた。部屋に戻って洗濯機の脱水が終わるのを待って洗濯物は自室に持ち帰った。窓のそばに引っ掛けてベッドに横になると午前二時をかなり過ぎていた。学生時代はコンパで終電を逃して始発までカラオケをしていたこともあったが、仕事で徹也するのは精神的にきつかった。
N経済新聞の記事もサッと見るだけである。大きなニュースとしてはМ銀行とT銀行の合併だった。一年前に両方から内定をもらって悩んでいた者に皆はネームバリューのあるМのほうを勧めた。まさか断った相手と一緒になるとはなぁと思ったが、今は契約書類との格闘で手一杯である。
三時間もすると窓からは朝日が差し込んだ。空腹もあって食堂が開くのが待ち遠しい状態である。股間が異様に高ぶっているのをなだめるためにトイレに入り、戻ってわずかな疲れをもとに短い眠りを得て再び新たな一日の始まりとなった。
よそのグループでは二十五人まとめての自衛官の集団契約の書類がまとまらないというトラブルが起きていた。「営業の女の子が体を張って取ってきたんだ」という強いクレームに課長から手伝ってあげてくれという要望があって担当外だが捜索を手伝うこともあった。たぶん棚への格納を間違えたのだろうということで、二時間かけて全て探し出した。
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