軍艦のある丘(10)
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秋のやわらかい日差しのなかを私は八時半に会社の玄関前を出るバスに乗るために早足で歩いていた。丘の下に広がる水田は黄色くなり、収穫を待つばかりである。富士山は頂上付近にうっすらと雪が積もっていた。
八月の大混乱も九月には収まった。敬老の日前後に何とか夏休みをもらうことが出来て実家に帰省した。鹿児島出身の者は車で片道十八時間かけて帰ったそうである。十月の半ばになってようやく土日も十分休める余裕ができた。
バスは10分で小田急の新松田駅に着いた。ワインカラーと白のツートンカラーのロマンスカー「はこね」が発車するところだった。これに乗れることができれば東京滞在時間もバスとの乗り継ぎが無理だった。ロマンスカーの写真が入った一万円のプリペイドカードで新宿までの切符を買った。
八時50分発の新宿行き急行は白い車体に青いラインを入れた六両編成である。先頭車に乗った私はカバンに入れたピンク色の「生保講座」テキストを取り出した。九月に行われた「約款と法律」「危険選択」は法学部であり、業務と密接に関わっている私には八十点以上取るのが必須とプレッシャーをかけられた。何とかクリアはしたが、次は「会計」「営業」である。
最初はガラガラだった車内も本厚木、海老名と客が増え、前に江ノ島からの四両編成が増結される相模大野では座れない人も出た。多摩川を渡ってからはノロノロ運転の状態で、通勤で毎日乗る人はさぞかし大変だろうと思った。
十時半に新宿に着くと帰りのロマンスカー「さがみ」の座席指定券を購入した。午後四時40分発で会社の玄関前に向かうバスとの接続もよく、東京に過去三回出たときの帰りにはこれを利用していた。
皇居前広場や秋葉原は一回目、その次は靖国神社と浅草を見た。新宿周辺はよく見ていなかったので、まず甲州街道の陸橋で東口に抜け、新宿御苑の近くまで行った。それから西口に戻ってマクドナルドで昼食を取った。
NSビルは三十階まで吹き抜けの構造で二十九階部分にブリッジがあった。そこに立つと上がガラス張りなので空中にいるような錯覚である。下を見ると足がすくんだ。さらに住友ビルなどを見て駅のほうへ戻った。
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