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2013年4月28日 (日)

下り坂(141)

前回までの 内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧くださいm(_ _)m

 武道場は残暑でムンムンしていた。三年生は引退していたが、全国制覇した者が基本の稽古をしているときに入ってきた。哲也はまだ面を着けずに基本を見ていた。一・二年生は合わせて三十五人くらいいて中学から始めた者も面をかぶって別の輪で回っていた。顧問の先生は職員室にいたままで、個人チャンピョンが師範代のような感じだった。

 哲也が面をかぶると並んだのは女子部員からである。二年生の主力は「師範代」のほうに並んだ。四十代のオッサンじゃ物足りないんだろなぁと思いながら、まず二分程度の地稽古、それから「一本勝負」ということにした。小手に来るのはしのいで、面に対しては胴に返した。自分から打つのはなかった。それでも「一本」では打って出てみて小手を取られたりした。

 一年生の経験者と二年生には最初の一本は絶対取る気持ちで臨んだ。だいたいがまず面で来たので胴に返した。「一本」ではすっと前に出るところの面や攻め崩されての胴を認めた。それから一年の初心者はまず打たせてみるところからだった。面を受け止めたあと、そのまま下がっていく者もいたが、右わき腹に切りつけて離れる者はセンスがあると感じた。

 初心者にどのように「一本」を与えるかは難しかった。面のスピードがある程度ある者には返し胴を浴びせ、振り向いたところの面。引き胴に力のある者はその胴、あまりスピードの無い者には引き胴を浴びせてそのあとどのように打つかというのを見た。最後に「師範代」が哲也の前に来た。稽古が始まって二時間近くが立っていた。

 新キャプテンが部員を整列させていたので、道場は哲也たちだけになった。暑さで足は動かなくなっていたが、気力は日本武道館での実業団なみに上げた。胴を狙ってきたのは押さえ、続いて引き面に来たのも何とか竹刀ではじいた。やや遠い間合いになってにらみ合い、哲也は半歩足を前に出した。面に対して返した胴は食い込まれていた。振り向いて合い面、そこから引き胴を取られた。

 終わったあとには一言のコメントでまず優勝おめでとう、そして継続は力ということを述べた。古いゼッケンが昭和五十四年のものであり、原点を大事にということも加えた。

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