下り坂(116)
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哲也は小学校一・二年の部の審判をさせられた。ここは男女の区別なしである。三年生以上は男女に分けられた。午前中に小中学生の試合をやり、午後から一般の部である。海上はコートが八つあり、小学一・二年は三十二人でのトーナメントだった。有効の判定は「当たっただけ」でも旗を上げてやることと緩められた。
昼食はカロリーメイトとスポーツドリンクで軽く済ませた。三十歳以上の男子はエントリーが二十人で、哲也はシードだった。大人になってから始めて初段に挑戦する人と三段を前年に取った人同士の試合は三段のほうが小手を二本決め、次が哲也との勝負である。Iの父も小手一本で勝っていた。МはW大学の学生に面と小手を取って初戦を突破した。
哲也は深呼吸をして試合場に進み出た。実業団も国土交通大臣杯も出なくなり、試合をするのは一年ぶりである。一年前の区大会では初戦で同じ四段の銀行員と戦って引き面で一本負けした。哲也は延長寸前に面を取りに来た相手の胴に返して次に進んだ。Iの父は小手抜き面を浴びて終了した。
МはF高校に入ったばかりの剣友会の後輩に出小手と抜き胴で先輩の貫禄を見せた。これでベスト16である。哲也の次の相手は三段の歯科医師だった。色々と仕掛けてくる相手の攻撃をしのいで面一本で勝ち抜いた。準決勝の相手は剣道を二十年ぶりに再開したという二段の人だった。哲也は出小手を先取したが、面返し胴で振り向いたところに面を浴び、最後は胴に切り込もうとして小手を打たれた。
МはA高校の者に面一本で勝ってベスト8、S学園高の者には小手を取られたが、引き胴と面で勝ち残り、高専の者を面と小手で倒して決勝に残った。相手は剣友会の同期でJ高校のゼッケンを着けていた。戦いは面一本ずつで延長に入った。Мの相手が面に出たのを首をすくめるようにしてかわし、胴を抜いて決着をつけた。
「おめでとう。進路はどうするんだ」
表彰式のあと、哲也はМに尋ねた。哲也は賞状と賞品として竹刀一本。Мのほうは賞状にトロフィ、竹刀袋や何かの箱をもらっていた。
「理工学部に行こうと思っています」
「機械の関係かな」
「そういうところです」
時間は午後三時を過ぎていた。午後五時から区役所の近くで打ち上げをすることになった。
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