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2013年3月 6日 (水)

下り坂(93)

前回までの 内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧くださいm(_ _)m

 支店長の発表が終わると質疑に入った。まずK学院大学の先生が、アメリカで新規参入した会社がコンピュータ予約システムで不利に扱われたが、インターネット時代ではどうなるのかという質問をしてきた。

「旅行代理店に端末を置く予約システムは開発にコストがかかっていますから、開発した側としては自社の便を最優先で表示することになります。ただ、インターネットは利用者と会社をダイレクトにつなぎますからアメリカで起きた状況とはまた異なるのではないかと思われます」

 支店長の答えにその先生はさらに「もし代理店の中抜きというインターネット予約が広がれば、ネット予約割引というのも出てくるでしょうね」と水を向けた。旅行代理店との関係に関しては微妙な問題があるので、支店長は言葉を濁した。

「新規参入する会社のメンテナンス体制で、御社に整備を委託するというような話も出ていますが、敵に塩を送るというようなメリットは何でしょうか」

 こんどはR大学の先生からの質問である。規制緩和は運輸省のアリバイ作りに過ぎないと哲也は思っていたが、そんなことは口が裂けても言えなかった。新規参入に協力したというポーズで運輸省に恩を売っておくのは羽田空港の発着枠配分で多少の配慮をしてもらいたいというアナウンスである。新規参入が可能になるのは平成十年秋の羽田空港拡張で、配分割合を新会社にあまり多く割り当てないで欲しいというのが本音だった。

 支店長は「安全は絶対条件ですし、当社としましては整備の受託による収入というところでしょう」と答えた。アメリカでは新規参入の会社が首都で橋に衝突する事故を起こしたし、ソ連の崩壊でたくさん現れたエアラインも事故を頻発させていた。旧ソ連の場合は軍の飛行機を軍人たちがビジネスに転用しているのではないかという見立てもあった。スカイドリームは機材を新造されたボーイング767のリースという方針だが、問題は整備体制である。ボーイング767はA空輸の主力機材でもあり、技術的にはなんら問題はなかった。

 次の月にはJRの「のぞみ」と大阪モノレールがテーマと告げられてお開きになった。帰る前に哲也は関西部会を仕切っている市立大学の先生から「希望すれば個人として入会できますよ」と誘われた。十月に行われる全国大会は東京だが、テーマは規制緩和で、スカイドリームに関する発表の申し込みも出てきていると聞いた。年会費七千円で航空のみならず物流や観光もカバーした話が聞けるなら安いものかなと哲也は思った。

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