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2013年2月10日 (日)

下り坂(63)

前回までの 内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧くださいm(_ _)m

 話はN中の同期生の消息に移った。哲也は中田がI商事に入ったことや三浦がO医科大、広川がK大医学部にいることを伝え、平田は梅本が一浪してT大法学部に行き、A新聞に入社したこと、N高に行った者とたまたま出会って聞いたことを話した。

「大塚はまだ海上自衛隊なんだねぇ。どうなるんだろ」

「イラクへの攻撃に加わるのは難しいよねぇ。消費税が出来て社会党に票入れちゃった人多いし」

「憲法球場の理想と現実のギャップだなぁ。T大が無理なら・・・」

「Q大ってか? そういえばQ大の剣道部には小学生の女の子がイッパイ出稽古に来ているみたい」

「おとり捜査かもしれないぞぉ。ツトム君みたいなのがいたりして」

 関東で幼い女の子が殺された事件は波紋を広げていた。内向的な性格の者は疑われるし、K高では女子のいないクラスになった者が「俺、四歳か五歳くらいの女の子にしか興味ないもん」と言ってそれも一つの個性と認められたが、この事件以来は即危険人物になりそうな雰囲気に変わった。

「うちの学科じゃ人間の女の子には興味なくて、ボーイング737とエアバスA320はどっちがカワイイかと言ってても変な奴にはならない」

 古賀では通勤客がさらに乗ってきてドアの周辺は立っている人でいっぱいになった。平田は香椎で下り、後には客の一人が入ってきた。多々良川を渡り、吉塚からは新幹線が並走した。博多に着くと大半の乗客がホームに出た。 

 反対側のホームには長崎行の特急が止まっていた。クリームに窓の部分がエンジ色の車体が赤に窓の部分を黒と塗り替えられていた。「どうして赤にしたのだろう」「事故を起こしても血の色を目立たなくするためかも」という会話が聞こえた。

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