下り坂(60)
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寮に戻ったのは9時20分だった。食堂にあるAビールの販売機で一本買おうとしたらちょうど入ってきたその人におごってもらった。「ありがとうございます」と言った哲也に「3月は稽古できそうか」と尋ねてきた。新入社員研修のフォローアップとなる2泊3日のものは金曜の夜に上京して日曜日の夜に戻る形だった。そこではTOEICも行われるので、哲也はずっと対策をやっていた。
「旅行業務のほうは8月だったかな」
「昇段審査と重ならないかが」
A空輸でも子会社にツアーの企画・販売をするのを設立した。事務系は旅行業務の資格を取ることが推奨され、哲也はまず国内のみを目指していた。旅行業法・約款・JR運賃制度・国内航空運賃・国内観光地という科目があり、さらに出入国手続き・国際航空運賃・海外観光地をやれば海外旅行の取り扱いも可能となった。
「焦っても仕方ないから、まず昔のレベルに戻すことかな。岡部君の得意技はこれかな」
先輩は左手で右わき腹から左腰にかけて切り裂く仕草をした。哲也は「試合では結構多い感じでした」と応じた。
「3段まではすぐだけど、4段からがハードだよ。東京で3回受けて取れなくてこっちに来て2回目に通った」
「そんなに厳しいですか」
「大学のときは試合試合で段は興味なかったけどね。同期は何人か5段取って、市民大会とかでは審判をやるほうになってる」
「すると6段の方はかなり・・・」
福岡空港支店にいる6段を持つ人が一番年が上だつた。東区に住んでいて、Q電力や警察の特練もこちらで稽古していた。まだそういう所に行くレベルではないので、哲也は土曜日だけで済ませた。
「そのうち、大学に出稽古させてもらったほうがいいかな。3段受けるとなるとそのあたりと実技になるだろうし」
高校で3段になるのは相当なレベルで、大学生になって3段、大学生で凄腕が4段に行けるというようなところだった。年齢順に並べられるとやはり大学生とぶつかるなと哲也は思っていた。
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