« 東日本大震災(1771) | トップページ | 東日本大震災(1772) »

2013年2月11日 (月)

下り坂(65)

前回までの 内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧くださいm(_ _)m

 体育館は冷房を入れているみたいだったが、多くの人がいるために効いている感じはなかった。スポーツドリンクで水分を補給して正午近くになって3段の審査が始まった。一つの組み合わせが40秒程度、昼食を食べるのは審査が終わってからである。試合場の脇に正座して面と小手を着けた。9年ぶりに受ける審査だったが、その間に大学入試や色んな会社の入社面接と修羅場はたくさんくぐったつもりである。哲也は深呼吸で高ぶる気持ちを抑えた。

 36は哲也より少し背が高く、面や小手も早かった。39は哲也と背丈は同じである。やはり真っすぐな面一本で勝負していた。相手はそれに対して小手や胴も交えていた。「やめ」の合図があって哲也はラインから一歩入り、39と礼をして中央に進み出た。雲の上を歩いているような感じで真ん中で竹刀を合わせ、腰を落とした。

「はじめ」の掛け声で哲也は腹から気合をかけた。39も哲也をじっくり見て剣先をこすり合わせるようにして打つタイミングを計っていた。互いに面に打って出て竹刀のぶつかる音がした。反対に突き抜けて振り向くと39が小手を狙ってきたので、小手・面で返した。体当たりした状態から39は哲也の右胴を叩いて間を開けた。

 哲也は呼吸を整えて間を詰めた。剣先を低くして中心を攻めると相手はもう一度面を狙ってきた。哲也はその竹刀を受け止めると手首を返して右脇腹に一撃を加えた。すれ違ってからサッと振り向くと「やめ」の号令がかかった。相手は哲也にもう一度攻撃しようという素振りだったが、元の位置を探し始めた。

 36との立ち合いも最初は面で勝負した。哲也は右手首に衝撃を感じたが、そのまま面を撃ち抜いた。鍔迫り合いにならないように注意深く間合いを戻し、小手を攻めると面に出てきたので、剣先でCの字を描くようにして右胴を切った。鈍くはじける音がして36の上体が泳ぐように抜けているのが見えた。振り向いた36が猛然と面に来たのを押さえ小手すると時間がきた。

 昼食はカロリーメイトとミネラルで済ませた。実技の結果が発表されて、初段と2段は合格率8割、3段は9割である。哲也のところは37だけが落とされていた。それから学科試験となって昔と同じように床にはいつくばって暗記した解答例を書き込んだ。問題は打突の機会と剣道形の効果だった。

|

« 東日本大震災(1771) | トップページ | 東日本大震災(1772) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 下り坂(65):

« 東日本大震災(1771) | トップページ | 東日本大震災(1772) »