何となく 何とでも(7)
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正午前に成田を出発するロンドン行のA空輸201便の機内は満席だった。私の座席は右主翼の少し後方の窓側である。海外は香港とシンガポールに行ったものの、イギリスは初めてである。イギリス経済論を担当する者が行ったことないのは笑い話ということで、夏休み期間に「研修願」を出した。キャンパスが完全に閉まる期間からはみだして学生委員の会議を休む日が出るためである。
出張と違って詳細な報告義務はなく、目的は授業に必要な資料収集とした。書店で研究に関する文献を探すこともやるが、あとは授業の際にスライドでイングランド銀行やシティ界隈、ケインズの母校のイートンカレッジを出すつもりである。通路側には女子大生と思われる二人組がいたが、気になるのは中央4列にいる金髪の5歳くらいの少女である。
航空券とホテルの手配を済ませていろいろと計画を立てていたときにテロ事件が起きた。何が起きるのかという不安は大きいが、スケジュールに余裕を持たせてしのごうと思った。リバプールあたりに足を運ぶことも考えていたが、ロンドン周辺だけに絞ることとした。
博多と東京を「のぞみ」に乗るということを一度もしたことはなく、今回の旅はそれの往復よりもさらに時間を要する苦行である。盆は実家で過ごして成田には電車で来た。ロンドンには5泊して成田から福岡へと乗り継いで帰る予定である。秋には学会の発表もやるので予稿に取り掛からないといけなかった。
国内に比べると離陸滑走は長く感じたし、地面が遠ざかるスピードも鈍かった。主翼の後ろに長く垂れ下がったフラップが格納され、雲の中に突っ込んで真っ白になった。雲の上に抜けると747のシルエットに後光のような七色の円ができた。すぐに昼食が配られ、私はチキンの料理を選んだ。食器が回収されてしばらくするとロシア沿海州の海岸線が見えてきた。
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