下り坂(47)
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山手線に乗り換えて渋谷に移動し、駅の近くにあるホテルへチェックインしたのが午後5時である。道具は各自の部屋に置いて井の頭線で2駅の会場に向かった。試合の前夜祭として交流会が催された。井の頭線の電車を見た哲也はデザインが古そうだなと思った。
交流会の行われる建物はかなり古かった。地震でも起きたらひとたまりもなさそうな柱や壁である。各大学から選手は15人前後来ていて監督やOBを含めると200人を超える人がビュッフェ形式でパーティだった。
乾杯の前に順番に選手全員が前に整列して学部・学年・出身校を自己紹介した。T大にはK高で同じ学年だった弓道部の者が二年生として入っていた。Q大は福岡県の高校から進んだ者が半数を占めていた。
「剣道部じゃなかったんですかぁ」
皿に料理を盛っていた哲也はT大の者から尋ねられた。
「他のことにもチャレンジしてみたくて。2年で選手入りはヤッパリ弓がベースだったから」
「それはあるかな」
「こっちは人が多いから道具運ぶのも短いほうがいいような」
「どこへ行っても込み方がすごいでしょ」
アルコールは試合前ということもあってそんなに用意はされていなかった。各大学に戻ったのちに行われる飲み会は酒の量が遥かに多かった。
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