下り坂(50)
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滝を見下ろす席はさすがに埋まっていて、山本氏が壁際のソファ、その向かい側の椅子に哲也たちが腰を下ろした。山本氏は紙袋から小さなバッグを出して二人に紙切れを1枚ずつ渡した。
「これを記入してもらいます。注文は何でもご自由に」
そう言われても高すぎるものやアルコールは法度と就職活動に当たっての注意がゼミやクラブでなされていた。選んだのはポークソティとポテトサラダにライスとスープのセットだった。学生食堂のランチでは400円が相場なので、1000円を超えるものは社会人でないと無理と思った。
氏名・生年月日・住所・電話番号・所属ゼミ・所属クラブ・出身高校・高校でのクラブ・S銀行でやりたい業務・他社受験状況といった項目を埋めているともう一人が現れた。彼は入行3年目、経済学部の出身の原田と告げた。
「佐野君は保険関係も考えているんですか」
山本氏の問いはもう一人に対してから始まった。彼はN生命とD生命に興味があると答えた。ゼミは経済学部の金融論で保険も守備範囲というところである。
「岡部君は高校で剣道となっているけど、何段なの」
原田氏からの質問に哲也は「2段です」と応じた。大学でも何故続けなかったのかという攻めには「新しい競技に挑戦したかった」からと述べた。七帝で団体優勝と個人入賞と付け加えるとOB側は「それは・・・すごい」と反応した。そして原田氏はS銀にも「剣道部はある」と大学時代は剣道だったことを匂わせた。
やりたい業務は国際法との関連で外国為替としたが、これはハードだぞと二人は言った。他社については鉄道・航空としていてOBに話は聞いていると答えた。実際、JR二社と私鉄四社、航空も二社と接触した。それは職場の見学という名目でいきなりグループ面接だった。
「九州の会社は考えていませんね」
この質問には、資料の請求だけです、と答えた。JRに私鉄一社、電力、F銀行が九州企業だが、あとはS製鉄が故郷に関係の深いところである。
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