何となく 何とでも(8)
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ハバロフスクあたりで窓のバイザーを下ろすよう指示が出た。機内の照明も落とされて眠りたい乗客にはアリガタイ状態である。エンジンの轟音でどうしても眠れない私は、こっそりバイザーの下をずらして外を見た。下界は雲で真っ白になっていて747は太陽を追いかけていた。
前の座席の背もたれに埋め込まれたモニターがウラル山地を過ぎたことを示す頃には窓を開けてもよいことになった。大きな湖が通り過ぎると郊外に高層住宅の立ち並ぶ小奇麗な都市の姿が見えた。サンクトペテルブルク。川に面しているのがたぶんエルミタージュで斜めに伸びる通りはネフスキー通りのはずだった。フィンランド湾に細い道路が突き進んでいるのも見えた。
2度目の食事が配られて食べ終わるとオランダの点々と島が並んだ海岸線が目に入った。機体が前のめりになった感じがして海面が徐々に近づいた。隣の2人組と少しだけ会話した。ヒースローに着いたらエジンバラに向かうそうである。私は仕事でロンドンとだけ言って身分は伏せた。
イギリスは雲の下に隠れていた。高度は3000メートルくらいでスープの中に入るように外が真っ白になった。ヒースローはロンドンの西にあり、雲の下にロンドンがあるはずだがモニターはマップを写さなくなって機外の景色のほうは雲ばかりである。雲の中で左旋回してまもなく着陸のアナウンスがあった。
雲の下に出ると道路が見えた。左側通行のせいか日本に舞い戻ったのではないかという感覚である。雨粒が窓を激しく流れていた。田園がぐんぐん迫ってきて空港の敷地に入った。午後4時15分、日本ならもう日付が変わっているが、これからホテルまでの移動が残っていた。
入国審査を済ませ、地下鉄ピカデリー線の本当にチューブという狭い車両に乗り込んだ。ホテルはハマースミスというロンドンの西エリアにあるところを選んだ。空港がロンドンの中心から約20キロで、ハマースミスはほぼ中間だった。ピカデリー線はハロッズ、日本大使館、大英博物館をつなぐラインで分かりやすかった。
ホテルは駅からすぐだった。部屋は二人用を一人で使う形である。紅茶を沸かして飲むことが出来るのはいいサービスだった。風呂上りに持参したカロリーメイトと合わせて飲み、すぐベッドに横になった。体内時計をロンドンに合わせるのはやはり難しく、ロンドンの深夜に一度目が覚めた。
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