下り坂(48)
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ホテルには午後10時に戻り、朝7時に起きた。9時に井の頭線で前日と同じ駅に降りると地形が斜めになっていることに気付いた。哲也がそう言うとキャプテンは「赤坂とか乃木坂とか東京は結構デコボコしているんだよ」と応じた。
午前中は各自で練習をやり、午後から試合だった。距離は30メートルでグランドを横に使っていた。天気は高曇りの状態で一番やりやすいと感じた。先に女子から始まって 四大学と三大学のグループに分かれて五人の選手が順番に的を狙った。五人の総合得点で競い合うが、個人レコードも男女それぞれ上位三人が表彰されることになっていた。
女子の優勝はQ大学で、O大は四位だった。個人では同学年から二位に入った人が出た。一人で十本放って最高得点は百点になるが、彼女は八十二点をマークした。普段は七十点台の後半なので上出来だった。最高点は八十四点で、平均は七十二点だった。
哲也は二番手の射手である。H大・N大・Q大と同じグループだった。一番手はH大が七十点、N大が六十七点、Q大が七十四点、O大は七十三点である。哲也は深呼吸で気持ちを整え、手順をチェックしながら最初の一本を放った。的の中心に当たってどよめきが湧いたが、哲也は剣道の時と同じようにクールに二本目に取り掛かった。
哲也が出したスコアは七十九点だった。H大七十二点、N大六十八点、Q大七十一点で終了し、あとはチームメイト次第である。哲也の平均は七十点前後なのでいつもよりはよかったかなと思った。
五人全員が終わってO大は三百九十点である。H大が三百八十五点、N大は三百七十七点、Q大が三百七十一点と続いた。哲也の個人スコアは上から四番目で個人メダルの可能性は消えた。
残り三大学の結果はT大三百八十八点、T北大三百六十点、K大三百五十九点だった。団体優勝が決まってみんなは大歓声を上げた。哲也もこれは合わせた。みんなが一番いい状態で行けたのが非常に大きかった。個人で優勝したのはO大四人目の八十三点で、哲也のスコアは五番目で上位入賞の八位以内には入った。
「記念品は何かなぁ」
セレモニーのあと、T大に行った元弓道部が哲也に言った。彼のスコアは八十点である。メダルには一つ届かなかった。
「何だか図書券っぽい気もするけど」
「ビール券ってことはないだろなぁ」
封筒を開けてみるとやはり五百円の図書券十枚だった。上位三人は賞状に加えて図書券二十枚、優勝者だけビール券が五枚入っていた。
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