下り坂(42)
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次の日はモノレールに終点まで乗ってみた。バスで小倉駅前まで出てハンバーガーでランチを済ませた。国鉄の駅とモノレールの始発が300メートルくらい離れているのは不便だと感じた。雨が降ると傘をささなくてはいけないし、これならモノレール沿線から博多に向かうのは高速バスだなと哲也は思った。
4両編成の白と青に塗られた電車は高さ10メートルの位置を65キロで進んだ。有料道路の高架をまたぐために20メートルの高さになるところからN中が見えた。それから国鉄の日豊本線の上を交差して有料道路の高架の柱に取り付けられたところを走った。競馬場の停留所に入る直前、左手に広がる市立大学のキャンパスの武道館で剣道部が練習をしているのが見えた。春休みなので一部の者が自主的にやっているのだろうと哲也は思った。
市立大学の向こうは自衛隊の駐屯地で、団体優勝をした思い出の場所である。その先には刑務所があり、刑務所から南は丘になっていて住宅地の開発が進んでいた。モノレールの下には4車線の道路が走っていたが、この付近は新しく作られたばかりである。古くからある道は少し離れた場所を通っていた。
終点付近は団地が多く、モノレールの車庫、交通科学博物館、プールがあった。哲也はすぐに折り返して街中を歩いた。K高の帰宅部がたまり場にしているN書店を覗いたり、I百貨店にも立ち寄った。大阪の百貨店に比べるとこじんまりとした印象を受けた。哲也はよく大阪駅の南口に建つ27階建てのビルの展望室に行って眼下の駅に発着する玩具のような列車や淀川に何本も架かる橋、市街地に覆われて見えない空港に降りていく飛行機を眺めて過ごした。
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