下り坂(32)
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校内の巡回は単独だった。女子部員は受付のテントに貼りついていた。校内で特に大きな問題はなかったが、1年の時には文化祭を見に来た小学生の女の子たちに声をかけている不審な男がいた。それは数学の先生が「職務質問」して近くの大学の医学部に行った卒業生とわかった。
ESSの展示では英語のクロスワードがあった。生徒会の展示は役員の写真が並んでいて。N中からは三浦が書記長として入っていた。銀縁のメガネから茶色いフレームのタイプに替えたのを初めて見たのは部の予算配分の折衝のときだった。生徒会室で計理担当と話しているときに入室してきた彼に「ナンパな感じ」と言ったら「剣道部はゼロ査定でいいよ」と返された。噂では「陰の生徒会長」とも言われていた。
美術部の展示では、幼い女の子の後ろ姿を描いたものが目立つように置かれていた。サインは1年の時に同じクラスにいた者である。写真部ではインハイ予選のときに哲也が抜き胴を決めたシーンがあった。竹刀の先端が湾曲している瞬間が上手に撮れているなと感心した。鉄道研究会は6両の新幹線と蒸気機関車が4両の客車を引く二本を同じ線路を走らせていて「本当は無理なんだけど」と苦笑していた。
二年生は物理の階段教室で映画を上映した。一年生は教室での展示である。K高に来た野村のクラスは、環境問題をテーマに空き缶でピラミッドを作っていた。四本単位で組み合わされた三百五十ミリの缶は七段もあった。野村は剣道部には入らず、弓道に転向していた。
科学教室はバーゲン会場になっていた。収益はNHKの歳末助け合いに寄付するというのが伝統になっていて、品物の寄付を火曜日朝の全校朝礼で呼びかける係はここ数年東大に行っているというジンクスがあった。今年も学年でトップを言っている者が泣き落としをやっていた。集まったのは古い本や絵葉書、おもちゃ、中元や歳暮でもらったような日用品などである。
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