下り坂(20)
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クラス対抗試合は、九時から始まった。審判は剣道部顧問の一人だけである。二年生は体育のO先生、一年生は英語のK先生だった。哲也たちは時計の係を交代で務めることにした。三年生は七十六人いて三十八組だが、欠席している者もいた。一番初めが不戦勝で哲也たちのクラスがリードした。
五番目の試合で梅本が登場した。彼も県立高校を受けるが、私立はN以外考えていないと聞いていた。試合時間は三分で、彼は面と小手を取って引き上げた。延長はなしである。一・二年生も正午までには終わるはずだった。日差しのおかげで朝は冷たかった床も何とか耐えられる感じになっていた。
広川が出てきたときには両クラスは五分五分の状態だった。彼はK高の他に私立では長崎のS高を受けると言っていた。N高は二月の初めに全員が受けることになっていて、S高はそれより早かった。斎藤は長崎出身だが、N高にそのまま進むということを表明していた。広川は一分くらいの間に面を二本決めた。
三浦の試合が始まる頃には哲也のクラスが十四勝十二敗三引き分けだった。彼は小手を二本取って十五勝に引き上げた。県立の難しいところを狙っている奴はみんな勝っているね、と中田が呟いた。哲也はここで勝ったら受かると念じているのかもしれないね、と応じた。
剣道部の三組が始まる段階で、哲也たちのクラスは十六勝十五敗四引き分けになった。小松は哲也たちのクラスで、平田と抜き合わせた。彼は自宅に近い私立のJ高校を受けるつもりである。そして県立はS高校のつもりだった。無理をせずに引き分ければという戦術を取っていたが、平田の激しい攻撃をしのいでいるうちに手元が上がり、胴を決められた。
「あらら これはスリリングな展開になったなぁ」
中田はそう言って斎藤との戦いに臨んだ。
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